男子の性被害 誰に相談する?|10代の相談先の決め方を解説
最終更新日: 2026年10月22日
「男でも、性被害って言っていいのかな。」
「あのとき体が反応してしまった。自分も望んでいたんじゃないか。」
性被害と呼んでいいかどうかを、自分ひとりで決めなくても大丈夫です。相談するのは当然の権利だと、文部科学省が高校生向けに作った教材にも書いてあります(文部科学省「生命(いのち)の安全教育」教材(高校向け))。
あなたが望まない性的な行為はすべて性暴力と。
迷ったら医療機関を受診してください。体の調子で気になることがあるなら、それだけで診てもらえます。
男子の性被害は、国の調査に記録されている
ニュースで見る性被害は、女の子の話に見えているかもしれません。国の性犯罪・性暴力対策の方針は、男性は被害を申告しにくいという状況を、この問題の特性のひとつに挙げています(性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針)。
警察の統計にも男子の被害は載っていて、増えている
令和6年(2024年)の犯罪情勢をまとめた警察庁の資料に、男性被害者の数が出ています(警察庁「令和6年の犯罪情勢」)。
363人
不同意わいせつの男性被害者
156人
不同意性交等の男性被害者
前年の同じ時期と比べると、不同意わいせつが41.8%、不同意性交等が56.0%の増加です。どちらも警察が把握した人数で、実際に起きた数ではありません。それでも、男子の被害はここに数えられています。
被害にあった年齢は10代以下が多い
無理やり性交をされたことがある人が被害にあった年齢は、10代以下が多くなっています。
ただし性交を伴う被害に絞って聞いた設問で、男女を合わせた結果です。
たとえ体が反応しても、同意にはならない
文部科学省の教材は、性暴力を「あなたが望まない性的な行為」と定義しています。悪いのは加害者で、被害にあった人は悪くありません。
望まない性的な行為は、すべて性暴力になる
あなたが望んだかどうか。相手が恋人でも家族でも、そこは変わりません。行為の場面も、関係の近さも、関係ありません。
体の反応は、望んだことの証拠にはならない
決め手はあなたの気持ちです。体が何をしたかで決まるものではありません。
体がなぜそう反応するのかというしくみそのものは、被害とは別の文脈で何も考えていないのに勃起する?|高校生によく起きる理由を解説に書いてあります。動けなかった、声が出せなかった、というほうが引っかかっているなら、断れなかったときの受け止め方をセックスの断り方|相手を傷つけない5つの伝え方と「断れなかった」ときの対処法にまとめました。
男子が性被害を言い出せなくなる理由
内閣府が令和5年度に行った全国調査では、被害を受けた人の55.7%がどこにも相談していませんでした(内閣府「男女間における暴力に関する調査」報告書<概要版>)。
回答した18歳から59歳の男女2,950人のうち、被害の経験があるとしたのは140人です。男女を合わせた集計で、体を触られた、見せられたといった被害は含みません。
「男なら喜ぶはず」という思い込みが、口をふさぐ
友達に言えば笑い話にされそうだ、と身構える人がいます。
内閣府の同じ調査には、相談しなかった人と、相談までに5年以上かかった人(92人・男女合わせて)に理由を聞いた設問もありました。「恥ずかしくてだれにも言えなかった」が約5割です。
「言っても無駄だ」というあきらめは、3割の人が持っていた
「相談してもむだだと思った」が約3割、「自分さえ我慢すれば、なんとかこのままやっていけると思った」「そのことについて思い出したくなかった」も、それぞれ約3割でした。
法律も、子どもや若い人は言い出しにくいという前提があります
子どもや若い人は、特に被害を申告しにくい。法律を作り直したときの理由に、そういう認識の記載があります(法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」)。
相手が同性でも年上でも、男子の被害は成立する
相手が男だったから、年上だったから。それで自分を対象から外していませんか。文部科学省の教材の定義には、加害者が誰かという条件が入っていません。セクシュアルハラスメントは、異性間だけでなく同性間でも起こります。
国の計画は、年齢や性別で対象を分けていない
こども大綱は、こども・若者への性犯罪・性暴力について、年齢や性別にかかわらず被害に遭うことはあってはならないとしたうえで、相談・被害申告をしやすくする取組を進めると定めています(こども家庭庁「こども大綱」)。
場面ごとの動き方は、それぞれの記事にまとまっている
相手が誰だったかで、次にできることは変わります。
| こういうとき | まとまっている記事 |
|---|---|
| 電車やバスで、知らない相手から | 学生が痴漢被害を相談できる場所と対処法|一人で抱えなくていい |
| 同級生や、部活の相手から | 同級生のセクハラ?判断基準5つと今すぐできる対処法 |
| 先生や指導者など、評価する立場の大人から | 先生からのセクハラかもと感じたら|安心して相談する方法 |
| ネット越しに近づいてきた大人から | グルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律 |
やり取りのスクリーンショットをどう残すかは同級生からの被害をあつかった記事に、送ってしまった画像をどう消すかはグルーミングの記事にあります。
法律の名前は2023年に変わった
2023年7月13日に改正刑法が施行されました。強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に、強制性交等罪は不同意性交等罪に変わっています(法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」)。この2つは、年齢を問わず成立します。
そのうえで、16歳未満の人については、いわゆる性交同意年齢という別の線も引かれました。
ネット越しに近づいてくる大人の手口と、そのときに使える法律はグルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律のほうです。同意そのものの考え方ならセックスの断り方|相手を傷つけない5つの伝え方と「断れなかった」ときの対処法にあります。
警察や相談窓口に相談することに、年齢の条件はありません。
被害にあったあなたが罰を受けることはありません
自分も怒られるのではないか、という心配で止まっている人がいます。罪に問われるのは加害の側で、被害にあったあなたが罰を受けることはありません。
男子が「誰に言うか」を決める手がかり
内閣府の調査では、被害を受けた140人のうち29.3%が友人・知人に相談していました。相談した人の中では、いちばん多く選ばれた相手です。取れる行動は複数あります。最初の一人が、専門の窓口である必要はありません。
最初の一人は、いちばん近い人でなくていい
一人で抱え込まず相談してほしい。いちばん仲のいい友達が、いちばん向いているとはかぎりません。過去にその人がどうふるまったかで選びます。
最初の一人を決めるときの手がかり
- 誰かの重い話を、茶化さずに聞いていた人
- 聞いた話を、他の人に流さなかった人
- 顔を合わせずに、文字だけで伝えられる相手
- あなたの家や部活と、つながりのない人
選ぶのはあなた自身です。信頼できる大人を一人だけ決めるときの手順は、グルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律にあります。
相談するのは当然の権利だと、教材に書いてある
相談するのは当然の権利で、解決につながる最初の一歩です。
取り合ってもらえなかったのは、あなたの話し方のせいではない
話したのに何も変わらなかった、ということは起こります。二次被害です。性暴力にあった人が、周りの人の理解のない言動で心や体をさらに傷つけられることを指します。
それが起こる理由のひとつは、性暴力についての誤った認識です。
一人目に届かなかったときは、次に話す相手を選び直すという方法があります。同じ人に言い直すより、別の役割の人へ持っていくと状況が動くことがあります。学校のなかで誰にどう持っていくかは、同級生のセクハラ?判断基準5つと今すぐできる対処法にまとめました。
1年以上たってから相談した人もいる
内閣府の資料に、ワンストップ支援センターが報告した708件の面談について、被害からどれくらいで相談に至ったかの集計があります。その内訳では、「1年以上10年未満」と「概ね10年以上」を合わせると全体の約2割でした。長い時間が経ってから相談に至る人も、めずらしくありません(内閣府「ワンストップ支援センターに関する取組について」)。
体が心配な男子と、ただ話したい男子へ
以下の選択肢があります。体のことが心配なときは医療機関、まず誰かに話したいときは話を聞く窓口です。迷ったら医療機関を受診してください。
体のことが心配なときは、医療機関で相談できる
次のどれでも、医療機関で話せます。
医療機関で話せること
- 痛みが残っている
- 眠れない日が続いている
- 体の調子が前と違う気がする
- 痛みも変化もないが、体のことを確かめておきたい
症状・時期・既往歴により対応が異なるため医師に相談してください。時間が経ってからでも受診できます。
被害の話をどこまでするかを決めるのは、その場の自分です。体のことだけを伝えて診てもらう順番も選べます。
そこから先の判断は医師の役目です。自己判断せず医師の個別評価を受けてください。最終的な判断は医師が個別の状況に応じて行います。
話す場所としてのユースクリニック
ユースクリニック Produced byペアライフは、性や体のことで感じている不安や戸惑いを聞くカウンセリングの窓口です。必要なときは医療機関や専門の相談先につなぎます。
1回20分100円。この料金は、話を聞くカウンセリングのぶんです。10代から20歳まで、ニックネームで予約できます。保険証はいりません。本人の同意なく親や学校へ連絡することも原則ありません。
公的な相談窓口にも、男子から相談が届いている
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、47都道府県に52か所置かれています。電話での相談のうち、約1割が男性からのものでした。男子が来ない場所ではありません。
男子の性被害についてよくある質問
Q. 相手が女性でも、性被害になりますか
なります。教材の定義に、相手の性別という条件は入っていません。条件はひとつ、あなたが望んだかどうかだけです。
Q. 何か月も前のことでも、相談していいのでしょうか
できます。ワンストップ支援センターが報告した708件の面談のうち、1年以上たってから相談した人が約2割いました。日付や前後があいまいでも、覚えているところから話は始まります。
Q. 話したのに、何も変わりませんでした
珍しいことではありません。文部科学省の教材に二次被害という言葉があって、周りの人の理解のない言動でさらに傷つけられることを指します。理由のひとつは、性暴力についての誤った認識です。あなたの話し方の問題ではありません。次は、一人目とは別の役割の人を選び直すという方法です。学校のなかでの持っていき方は同級生のセクハラ?判断基準5つと今すぐできる対処法にあります。
Q. 親に知られずに相談することはできますか
保護者以外の大人から始める方法があります。誰を一人目にするかは、グルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律にまとめました。話した内容がどこまで、誰に伝わるのかを、話し始める前に相手へ確かめておくのも一つの方法です。
Q. 送ってしまった画像を消したいです
全部が消せる、とは言い切れません。時間がたっていても、削除を頼める窓口は実際にあります。何を残してから動くか、どこへ頼むかはグルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律にあります。
Q. 相手を訴えたいわけではありません
相談と、警察に届けることは別々です。話を聞いてもらうところで止まる、という選び方もあります。届けるかどうかを決めるのは、そのあとです。どちらを選んでも、体のことは切り離して先に診てもらえます。
言えないままでいる男子のあなたへ
迷ったら医療機関を受診してください。体の調子で気になることが出てきたら、そこは先に診てもらえます。
ユースクリニック Produced byペアライフは、性や体のことで感じている不安や戸惑いを聞くカウンセリングの窓口です。必要なときは医療機関や専門の相談先へつなぐ役割です。1回20分100円、10代から20歳まで、ニックネームで予約できます。
この記事のポイント
- 国の性犯罪・性暴力対策の方針は、男性は被害を申告しにくいという状況を、この問題の特性のひとつに挙げています
- 文部科学省が高校生向けに作った教材の定義では、あなたが望まない性的な行為はすべて性暴力です。悪いのは加害者で、被害にあった人は悪くない、とも書かれていて、体が反応したかどうかは条件に入っていません
- 内閣府の調査(男女140人・体を触られた、見せられた被害は含まない設問)では、被害を受けた人の55.7%がどこにも相談していませんでした。29.3%は友人・知人に相談していて、これが相談先で最も多い相手でした
- 2023年7月13日施行の改正刑法で、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪という名前になりました。この2つは年齢を問わず成立します。警察や相談窓口に相談することに、年齢の条件はありません
- 取り合ってもらえなかったときのための言葉が、国の教材に二次被害として置かれています。次に話す相手は選び直せますし、被害から1年以上たってから相談に至った人も約2割いました
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