グルーミングとは?大人が近づく手口と10代が使える法律
最終更新日: 2026年9月7日
「ネットで知り合った大人の人から、会おうって言われている。」
「写真を送ってと言われて、断れなかった。」
「今さら誰かに言っても、送った自分が悪いと思われる気がする。」
写真を送った自分が悪いなど、そう思わせるところまでがこの手口に含まれています。国はこの行動に名前をつけていて、性的グルーミング(性的手なずけ)と呼びます。定義は「こどもに徐々に近づき、警戒心を解いて自分を信用させることで、性暴力を振るいやすくするための加害者の行動」(こども家庭庁「横断指針」)。名前がつくほど、同じやり方が繰り返されてきました。
相手はまだ何もしていない、と感じているかもしれません。法律の見方は違います。2023年7月に施行された刑法182条は、16歳未満の人に会おうと持ちかけた段階と、性的な姿の映像を送るよう求めた段階を、それぞれ別々の罪にしました(e-Gov法令検索「刑法」)。令和6年(2024年)にはこの条文で134件が検挙され、うち75件は映像送信要求でした(警察庁「令和6年における少年非行及び子供の性被害の状況」)。
グルーミングとは、大人が時間をかけて近づいてくるやり方
グルーミングという語は、動物の毛づくろいを意味する英語の groom からきていて、日本語では手なずけるが近い言葉です。これは被害を受けた側の落ち度ではなく、加害者の行動です(こども家庭庁「横断指針」)。
「最初から怖い人」ではないところから始まる
優しく声をかける。悩みの相談にのって共感してみせる。容姿や性格をほめ、ときには叱ってみせる。飲食をおごり、プレゼントを渡す。手口として並んでいるのは、この程度の行動です(こども家庭庁「横断指針」)。ここまでに、こわいと感じる要素はひとつもありません。
人には、受けた恩に何かを返さなければと感じる心のはたらきがあります。返報性と呼ばれるものです。おごってもらった、話を聞いてもらった。そのあとに何かを頼まれると、断りにくくなります。偶然そうなるのではありません。
段階的に上がっていくので、途中で気づきにくい
相手は二人きりの状況を何度もつくります。体に触れる程度が少しずつ上がります。頭や腕に触る、ゲームだと言って触れさせる。ひとつずつを見れば、大きな出来事ではありません。
このとき「まさか危ないことはされないだろう」「このくらいならまだ大丈夫」という心のはたらきが起きます。異常を正常の範囲内と受け取って、心を平静に保とうとする反応です(こども家庭庁「横断指針」)。段階を細かく刻むほど、この反応は強く出ます。加害の側から見れば、それが目的です。
そして何かが起きたあとに、「二人だけの秘密だから」と口止めされます。鍵の役目をするのは、罪悪感と恥ずかしさです。
標的になりやすいのは、家庭のことで悩んでいる、精神的に不安定になっているなど、弱みを抱えている状態の人です(こども家庭庁「横断指針」)。つらい時期だったから狙われた、ということです。弱っていたことは、あなたの落ち度ではありません。
大人が使う言い回しには、繰り返し出てくる型がある
次のような言葉が出てきたら、いったん止まってください。
距離を詰めにくるときの言い回し
- 「親には言わないほうがいいよ」「わかってくれないと思う」
- 「君は同い年の子より大人だね」「他の子とは違う」
- 「これは二人だけの秘密ね」
- 「相談にのってあげたのに」「信じてないの」
- 「顔だけでいいから」「みんなやってるよ」
- 「バラされたくなかったら」
どれかに心当たりがあるなら、それだけで誰かに話せます。手口の全体を説明できなくてもかまいません。
SNSで知り合った年上の相手との関係については、社会人の彼氏と付き合うときに知っておきたいことでも触れています。
グルーミングで「会おう」と言われた時点で、法律は動いている
会う約束はまだしていない。写真も送っていなくても、その段階にも名前がついています。2023年7月13日に刑法へ加わった182条、見出しは「十六歳未満の者に対する面会要求等」です。わいせつ目的面会要求等罪という呼び方も見かけますが、指しているものは同じです。
会おうと持ちかける行為そのものが、三つの型で罪になる
182条1項が挙げるのは、次の三つです(e-Gov法令検索「刑法」)。
刑法182条1項(わいせつの目的で16歳未満に面会を要求する行為)
- おどしたり、うそをついたり、誘惑したりして会おうと求める
- 断られたのに、繰り返し会おうと求める
- お金や品物、その他の利益を渡す、または渡すと申し出て会おうと求める
法定刑は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。実際に会ってしまった場合は2項に移り、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に上がります。2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑へ一本化されました。
そこまでするつもりはない。そう感じているかもしれません。相手を罰したいかどうかと、いま誰かに話すかどうかは、別々に決まります。届け出るかどうかを決めるのは、相談したあとで間に合います。
対象は16歳未満。13歳以上のときだけ、年齢差の条件がつく
182条が守る相手は16歳未満です。ただし相手が13歳以上16歳未満のときは、刑法182条の条文が「その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者」であることを条件にしています。これは5歳以上の年齢差にあたります。13歳未満が相手のときは、この年齢差の条件がつきません。
16歳、17歳のときに使える道
182条の対象年齢からは外れます。それでも、まだ複数の道が残っています。
16歳以上でも動かせるもの
- 児童ポルノ禁止法は18歳未満を対象にしています。裸の画像を撮らせた、送らせた、持っている行為はここで扱われます
- 各都道府県の青少年保護育成条例は、18歳未満との性的行為を規制しています。内容は自治体ごとに違います
- おどし、たちの悪い言動、地位の利用などがあれば、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪の対象になる場合があります
16歳を過ぎていても、未熟さに付け込まれている可能性が高いことに変わりはなく、保護の対象に入ります(こども家庭庁「横断指針」)。
まだ会っていなくても、すでに検挙されている
2024年、この条文での検挙は134件でした。内訳は、わいせつ目的面会要求が34件、実際に面会したものが25件、映像送信要求が75件です(警察庁「令和6年における少年非行及び子供の性被害の状況」)。会う前の段階で立件された事件が、1年でこれだけあります。
「何もされていないから相談できない」は、法律の側から見ると成り立ちません。
「送って」と言われた時点で、大人の罪になる
写真を送ってと言われた時点で、自分が何かを踏み越えたと感じているかもしれません。踏み越えたのは相手です。182条3項が罪にしているのは、16歳未満の人に性的な姿の映像を送るよう要求した行為そのものです(e-Gov法令検索「刑法」)。法定刑は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
送ったかどうかは、罪の成立に関係しない
条文が処罰の対象にしているのは「要求した者」です。あなたが応じたかどうか、実際に画像が届いたかどうかで、成立が変わる書き方にはなっていません。断れた場合も、断れなかった場合も、要求した側の行為は同じ位置です。
自分で撮って送らされる被害が、いま最も多い
2024年の児童ポルノ事犯の被害児童は1,265人でした。そのうち最も多い被害の形が、児童が自らを撮影した画像による被害で462人、全体の36.5%です。年代別では中学生が253人(54.8%)、高校生が147人(31.8%)、小学生が54人(11.7%)となっています(警察庁「令和6年における少年非行及び子供の性被害の状況」)。
だまされたり脅されたりして自分の裸を撮らされ、送らされる。この形が最多で、しかも中学生が半数を超えています。あなたひとりに起きた特別なことではありません。
知らないうちに撮られていた場合に動くのは、別の罪です。2023年にできた性的姿態等撮影罪で、ひそかに撮る行為そのものが対象になります。撮られたかもしれない、と思っているなら、学生が痴漢被害を相談できる場所と対処法|一人で抱えなくていいに相談先の選び方があります。
求められて送った側を処罰する条文はない
いちばん聞きにくいところだと思うので、先に答えを置きます。児童ポルノ禁止法も刑法182条も、処罰の対象として書いているのは求めた側、撮らせた側、持っている側です。求められて自分を撮った本人を処罰する条文にはなっていません。
「自分から送った」「好きだった」でも、その構造は変わらない
好意を持っていた。自分から送った。誰にも強要されていない。そう感じている人ほど、相談から遠ざかります。
好意があったことは、被害を打ち消しません。加害を加害と受け取れず、むしろ相手に好意を抱いて性的な行為を受け入れてしまう。それも被害の形のひとつで、保護の対象から外れません(こども家庭庁「横断指針」)。その感じ方自体が、手口です。
「危ない投稿をしたから狙われた」は、統計と合わない
SNSがきっかけの性被害で、子どもと相手が知り合うことになった最初の投稿は、約7割が被害を受けた子ども自身の投稿でした。ただしその中身の約半数は、プロフィールのみ、趣味・嗜好、日常生活、友達募集といった、犯罪に巻き込まれるとは考えにくいものです(警察庁「児童ポルノ事犯等の現状」)。
同意や断り方の考え方はセックスの断り方|相手を傷つけない5つの伝え方と「断れなかった」ときの対処法に、学校の中で起きたときの動かし方は同級生のセクハラ?判断基準5つと今すぐできる対処法にまとめています。
体のことは、72時間と120時間で手段が変わる
法律の手続きをどうするかは、まだ決めなくてかまいません。ただ、体のことには先に区切りが来るものがあります。迷ったら医療機関を受診してください。
妊娠の可能性があるとき、緊急避妊薬という手がある
性交があった場合、緊急避妊薬は早く飲むほどよく効く薬です。レボノルゲストレル(よく処方される種類)は、72時間以内に1回飲むと約80%の妊娠を避けられます(日本産婦人科医会)。100%ではありません。72時間を過ぎても120時間(5日)以内なら飲めますが、3日間を過ぎると効果は低くなります。ウリプリスタール酢酸エステルは性交後5日以内が目安です(MSDマニュアル家庭版「緊急避妊」)。
飲んだあとに出ることがあるのは、不正出血、頭痛、吐き気、下腹部の痛み、だるさです(PMDA ノルレボ錠1.5mg 添付文書)。飲んで2時間以内に吐いてしまったときは、飲み直しが必要になることがあります。
費用や受け取り方はアフターピルは高校生でも処方される|親にバレない方法と相談窓口を解説にまとめました。
120時間を過ぎたからもう手はない、ということにはなりません。その日にできるのは、妊娠しているかどうかの確認、感染の検査、体の状態の診察です。
着替えや洗濯を急がないほうがいい場合がある
被害からあまり時間が経っていないとき、着ていた服やシーツをそのまま袋に入れて残しておくと、あとで役に立つことがあります。洗ってしまうと戻せません。シャワーを浴びたいと思うのは自然な気持ちです。ただ、先に相談だけでもしておくと選べる幅が変わります。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは公的な窓口です。産婦人科の受診、緊急避妊、証拠を残すこと、警察に届けるかどうかの相談を、まとめて扱います。全国に置かれていて、最寄りのセンターにつながる全国共通の電話番号があります。届けるかどうかを決めてから連絡する必要はありません。
体の話は、気持ちの整理を待ってくれません。不安な気持ちは自然な反応です。一人で抱え込まず相談してほしいと思います。
送った画像を消していく道すじ
正直なところ、全部を消せるとは限りません。一度流出した画像を完全に消すのは、とても難しいことです(警察庁「なくそう、子供の性被害。」)。それでも、早く動いたほうが範囲は狭くなります。
ブロックする前に、残すものがある
まずブロックしたくなります。ただ、ブロックするとやり取りの履歴が見えなくなるアプリがあります。順番を逆にしてください。
1. 画面を撮る
相手のアカウント名、プロフィール画面、やり取りの全体、日付が写っている部分を、スクリーンショットで残します。
2. 場所を控える
アカウントのURL、どのアプリやサイトか、いつ知り合ったか。手書きのメモで十分です。
3. 大人を一人だけ決める
保護者、学校の先生、養護教諭、スクールカウンセラーのうち、話せそうな一人を決めます。全員に話す必要はありません。
4. そのあとでブロックする
記録を取り終わってから接触を絶ちます。
身近な大人の中に選べる人がいないときは、外の窓口から始める順番もあります。ユースクリニック Produced byペアライフなら、ニックネームのまま、誰に話すかを決めるところから相談できます。
削除を頼める窓口がある
ネット上の児童ポルノについては、インターネット・ホットラインセンターが公的な通報窓口です。民間ではセーファーインターネット協会のセーフラインが削除依頼を扱っています。警察に相談した場合も、削除に向けた手続きの案内を受けとれます。
どこに連絡する場合でも、手元に上の1と2がそろっていると話が早く進みます。名前で検索すれば窓口のページが見つかります。
うまくいかなかったときにも、次がある
削除の依頼が通らないことも、時間がかかることもあります。そのときは相談先を変えられます。警察、ワンストップ支援センター、法務局の人権相談は、それぞれ別の手続きを持っています。ひとつ断られたことが、全部の終わりを意味するわけではありません。
グルーミングについてよくある質問
Q. まだ何もされていないのに、相談していい?
してください。刑法182条は、会おうと要求した段階、映像を送るよう要求した段階を、それぞれ罪にしています。2024年の検挙134件のうち75件は、映像の送信を求めた段階のものでした。何かが起きるのを待つ必要はありません。
話す先は選べます。保護者、学校の先生、養護教諭、スクールカウンセラー、警察のどれでもかまいません。ユースクリニックで話を聞くこともできます。
Q. オンラインで性的な行為を求められました(いわゆる「おな電」)。これも同じ?
ビデオ通話で性的な姿を映すよう求められた場合、その映像を送信させる要求にあたる可能性があります。刑法182条3項は、性的な部位を露出した姿などをとってその映像を送信することを要求する行為を対象にしています。相手が16歳未満のあなたに求めたのであれば、要求した時点でこの条文に当たります。
録画されていたらどうするか。確かめようがない部分は残りますが、そのことも含めて相談先で話してください。
Q. 何か月も前のことです。今から言っても遅い?
遅くはありません。被害を誰かに話すまでに時間がかかるのは、よくある経過です。一部だけ話して相手の反応を確かめ、不安が高まれば嘘や冗談だったことにして自分を守る。そこまで含めて、想定の範囲に入っています(こども家庭庁「横断指針」)。
体のことで期限があるものは過ぎているかもしれません。それでも、画像への対応、相手への対応、これからの気持ちの整理は、今日から動かせます。
Q. 親に知られずに相談できる?
知られたくない理由があると思います。まず保護者以外の大人に話す形から始められます。養護教諭、スクールカウンセラー、ワンストップ支援センターのほか、ユースクリニックでも話を聞きます。どこも、あなたの了解なしに保護者へ伝えることは原則ありません。ただし学校の先生や養護教諭は、虐待が疑われるときに通告する義務を児童虐待防止法で負っているので、そこは例外です。
ただし、警察へ届け出る、削除の手続きを進めるといった段階では、保護者の関与が必要になる場面があります。その場合も、いつ誰にどう伝えるかを相談しながら決められます。体に触れられたときは、親に伝えるかどうかとは切り離して、受診だけ先に済ませる順番もあります。最終的な判断は医師が個別の状況に応じて行います。
「気づくのが遅かった」ということはない
気づけたはずだ、と自分を責めているかもしれません。グルーミングでとられる行動は、親身に話を聞いてくれる、褒めてくれるといった、ふつうの大人の行動とよく似ています。だから加害の意図があるかどうかを、その場で見極めるのは難しいことです(こども家庭庁「横断指針」)。
見分けにくいように作られています。だから見抜けなかったことは、判断力の問題ではありません。自責感を持たせるところまでが手口です。
自己判断せず医師の個別評価を受けてください。体に触れられた、痛みがある、妊娠の可能性がある。どれかがあてはまるなら、医療機関へ行くのが早いほど、選べる手が多く残ります。
ユースクリニック Produced byペアライフは、性や体のことで感じている不安や戸惑いを聞くカウンセリングの窓口です。必要なときは医療機関や専門の相談先につなぎます。1回20分100円、10代から20歳まで、ニックネームで予約できます。保険証はいりません。本人の同意なく親や学校へ連絡することも原則ありません。
あなたが今この記事を読んでいるということは、もう気づいているということです。今日は誰にも話さない、という選択もあります。そのうえで、画面のスクリーンショットだけ撮っておく。それだけでも次の日に渡せるものが増えます。
この記事のポイント
- 性的グルーミングは、こどもに徐々に近づいて警戒心を解き、性暴力を振るいやすくするための加害者の行動です。国が用語として定義しています
- 刑法182条は、16歳未満に会おうと要求した段階と、性的な映像を送るよう要求した段階を、それぞれ罪にしています。2024年の検挙は134件、うち75件が映像送信要求でした
- 処罰の対象は求めた側です。求められて自分を撮った本人を処罰する条文にはなっていません。好意があった場合も同じです
- SNS性被害のきっかけになった投稿の約7割は被害児童本人のもので、その約半数はプロフィールや日常生活の投稿でした。隙があったから狙われた、という説明は数字と合いません
- 体のことには先に区切りが来ます。緊急避妊薬は72時間以内なら約80%、120時間まで手段が残り、着ていた服はそのまま袋に入れておきます。画像は、ブロックする前にスクリーンショットとURLを残してから動きます
ユースクリニック公式インスタグラムInstagramでも発信しています
ペアライフクリニックの実績
性感染症学会・感染症学会 所属医師 15名
性の健康カウンセラー 3名
思春期保健相談士 1名
LGBT基礎理解検定初級 1名
ペアライフクリニックがこの記事の監修を行っています。