親のDVを相談できない高校生へ|報復・家にいられない不安と選択肢
最終更新日: 2026年5月30日
親に殴られる。でも、誰かに言ったら家にいられなくなりそうで、何もできない——
うちのこれって DV なのかな。それともしつけ? 自分が悪いだけなのかな。
言ったら、もっとひどくなる気がする。報復が怖い…
親からの暴力を受けていて、それを誰にも相談できない。その状態は、自分の安全を守るための自然な反応です。あなたが弱いからでも、家族を裏切っているからでもありません。誰にも知られずに、まずは話を聞いてもらうだけの相談先が、いくつかあります。
この記事は、親からの行為が虐待やDVに該当するか、相談できないと感じる理由が自然なものであること、家にいられなくなる・報復が怖いのを踏まえた上で取れる選択肢、親や学校に知られずに話を聞いてもらえる場所を、順番にまとめています。
目次
親からの行為が DV や虐待にあたるか
親に怒られているのと、親から虐待を受けているの境目は、自分では分かりにくいものです。まずは、児童虐待防止法という法律がどう定義しているかを、整理してみます。
児童虐待には4つの種類がある(身体的・心理的・性的・ネグレクト)
児童虐待防止法 第2条は、児童虐待を4つに分類しています。下に整理しました。
児童虐待の4類型(児童虐待防止法 第2条)
- 身体的虐待: 殴る・蹴る・物を投げつける・髪を引っ張る・突き飛ばす・首を絞めるなど
- 心理的虐待: 暴言・無視・きょうだいへの差別的扱い・面前DV(親同士のケンカを見聞きする)など
- 性的虐待: 性的行為の強要・性器を触らせる・性器の露出など
- ネグレクト: ご飯を作ってもらえない・お風呂に入らせてもらえない・病気でも病院に連れて行ってもらえない・登校させてもらえないなど
殴る・蹴る・物を投げつける行為は身体的虐待にあたります。2020年4月の同法改正で、親による体罰は明確に禁止されました。しつけだから、という説明は法律上は通りません。殴られてけがをしたときや、体の痛み・不調が続くときは、医療機関の受診も考えてください。
親同士のケンカを見聞きするのも虐待(面前DV)
2004年の児童虐待防止法改正で、面前DVは心理的虐待として明確に位置づけられました。お父さんがお母さんを殴っている、親のケンカを毎日のように見聞きする状況も心理的虐待です。自分は殴られていないから違う、と思う必要はありません。
自分のせいで怒られていると感じても、それは虐待の影響
DVや虐待を受けている人は、加害している側からお前が悪いからと言われ続けることで、自分が悪いと思い込まされていきます。内閣府の資料は、DVが支配と従属の関係を作り被害者は自分が悪いと思わされる構造を持つと説明しています。
自分が悪いから怒られている、と感じているなら、その感覚自体が虐待の影響として説明できるものです。あなた自身の感覚や判断力がおかしいのではありません。
これくらいで虐待と言っていいのかと思ったら
程度の大小で、相談していいかを決める必要はありません。あなたが嫌だ・怖いと感じていれば、それは相談の対象になります。他の人はもっと大変だから自分は我慢しよう、と考えなくて大丈夫です。児童相談所も、スクールカウンセラーも、深刻度が高い被害だけを受け付ける場所ではありません。
親からのDVを相談できない理由
相談したらいいと頭では分かっていても、足が止まる。そこには、いくつもの理由があります。その理由はどれも、自分を守るためのものです。
言ったら家にいられなくなるのが怖い
これは事実が半分・誤解が半分です。児童相談所に話したからといって、必ずすぐに一時保護されて家を離れる、ということにはなりません。児相は、まず子どもと家庭の状況を調査して、支援計画を立てるところから始めます。一時保護が発動されるのは、子どもの安全が緊急に脅かされていると判断された場合です。期間も、原則として2か月以内と児童福祉法 第33条で定められています。
報復が怖い・もっとひどくなるのが怖い
通告した子どもの情報は、児童虐待防止法 第7条で法的に守られる仕組みです。児童相談所が親に対応するときも、子ども本人からの通告であることは伏せられる工夫がされています。
ただし、絶対にバレないとは言い切れません。ここは正直に書いておきます。だからこそ、児相のソーシャルワーカーと話しながら、どう動くかを段階的に決めていくほうが安全な動き方になります。何の準備もなく一人で動くより、相談員と一緒に手順を組むほうが、あなたに合うペースで進められるはずです。
親を傷つけたい訳ではないという葛藤
親への愛着と恐怖が、同じ自分の中に同居している。優しいときの親も知っている。それは矛盾ではなく、自然な感情です。児童相談所の対応は、親を罰するためではなく、子どもの安全を守りつつ家族を支援するのが基本方針です。
自分が大げさなだけかもと感じる
自分の感じていることは大げさなのではないか、と思ってしまうのも、DV・虐待を受けている人によくある認知のパターンです。第三者、たとえば児童相談所のソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、弁護士などに状況を客観的に整理してもらうだけでも意味があります。判断や決定を、その場で求められることはありません。
親に知られず相談できる場所(DV相談)
いきなり警察や児相は重い、と感じる人が多いです。ここから、敷居が比較的低い相談先を順番に紹介します。どこを選ぶか、選ばないかは、あなたが決めて大丈夫です。
まず学校の保健室・スクールカウンセラーに話してみる
養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーには、生徒のプライバシーを守る職務上の責任があります。一方で、児童虐待防止法 第6条で、教職員は虐待を発見したときの通告義務を負っています。完全な秘密ではないという現実は前提に置いた上で、最初に話す相手として安心して使える場所です。
児童相談所虐待対応ダイヤル(いちはやく)
全国共通のダイヤル「189(いちはやく)」から、最寄りの児童相談所に自動で繋がる仕組みです。匿名での通告も可能で、子ども本人からの相談も対象になります。通告と聞くと重く感じるかもしれませんが、実際はちょっと相談したい、というレベルから話せる場所です。電話以外に、こども家庭庁の親子のための相談LINEも併用できます。
母親が父親からDVを受けているとき(配偶者暴力相談支援センター)
母親が DV を受けていて、それを止めたいと思っている子どもや、母親と一緒に逃げたいと考えている人は、配偶者暴力相談支援センター(全国共通のダイヤル経由で最寄りに繋がる)に相談できます。DV相談プラスでは電話相談が365日24時間で、チャット相談も併用できる仕組みです。子どもからの相談も受け付け対象になっています。
弁護士会の子どもの人権110番
各都道府県の弁護士会が運営している、子ども専用の法律相談窓口です。子ども本人からの相談ができます。後で説明する子どもシェルターへの入居相談も、ここを経由することが多いです。法律相談というと身構えてしまうかもしれませんが、ちょっと話を聞いてほしい、程度で大丈夫です。
もう一つ、敷居の低い場所もあります。家でも学校でもない、第3の話せる場所として、記事の後半ではユースクリニック Produced byペアライフを紹介します。「いきなり児相は重い」「学校では知り合いに見られそう」という人に向けた、100円で20分、話を聞いてもらえる選択肢です。
親と離れる選択肢を取るとき、どんな道筋があるか
家にいられなくなる、を漠然と恐れている人は多いです。実際には、親と離れる選択肢には複数の道筋があります。一つに絞られている訳ではありません。どれか一つを選ぶ必要はありません。選択肢があると知るだけで大丈夫です。
選択肢のなかには、原則18歳未満を対象にしたもの(児童相談所の一時保護)と、18歳以上でも使えるもの(子どもシェルター・女性相談センター)があります。年齢で扱いが変わる点だけ、頭の片隅に置いておくと、後で混乱が少なくなります。
児童相談所の一時保護(原則18歳未満)
児童福祉法 第33条にもとづき、児童相談所長が必要と判断したときに発動されます。親権者の同意がなくても可能です。期間は原則2か月以内で、施設・里親家庭・児相内の一時保護所のいずれかで受け入れられます。2025年6月から、一時保護開始時に裁判所の確認が必要となり、手続きの透明性が高まりました。
子どもシェルター(15歳〜20歳が主な対象)
児童相談所の一時保護とは別の枠組みで、社会福祉法人やNPOが運営する場所です。主に10代後半が対象で、社会福祉法人カリヨン子どもセンターの場合、利用枠組みによっては15歳から20歳までの幅で受け入れがあります。2025年1月時点で、全国に約20軒のシェルターが稼働中です。入居の相談は、弁護士会の子どもの人権110番が窓口になることが多いです。
18歳以上の人へ
児童福祉法でいう児童は18歳未満なので、18歳以上は児童相談所の一時保護対象外です。代わりに、子どもシェルター・女性相談センター・配偶者暴力相談支援センター・自治体の若者支援センターが選択肢になります。18歳を境に相談する場所がなくなる訳ではありません。
親族宅や友達の家への一時避難
親族の家や友達の家に身を寄せたい、と考えることもあるはずです。親権者の同意なしの長期的な家出は、ひとりで動くと予期しないトラブルにつながることもあります。一方で、今夜は親戚の家に泊まる、というレベルなら、児童相談所や弁護士会と相談しながら計画的に動くという選択肢もあります。一度どこかに相談を入れてから決めていくのが、結果的にあなたに合う形で進められることが多いです。
親からのDVを相談したあと、何が起きるか
相談したら何が起きるか分からない、のは行動を止める大きな理由になります。ここから、児童相談所に通告したあと、おおよそ何が起きるかを段階的に整理します。
相談後は、あなたのペースに合わせて決まっていく
通告を受けても、いきなり大きな展開になる訳ではありません。まず児童福祉司が、あなたの安全を確認する家庭調査を行うところから始まります。子どもの安全確認は原則48時間以内に実施するよう、厚生労働省の方針で定められた手順です。次に児童心理司が心理面の状況を一緒に整理し、そのうえで支援の組み立てに入っていく流れです。在宅で見守る、一時保護にする、家族と少し距離をおく。どの形になるかは、あなたの状況によって変わります。一時保護が必ず発動される訳ではありません。
親に通告がバレる可能性と、その対処
児相は通告者の秘密を法的に守る義務を負っています(児童虐待防止法 第7条)。ただし、子ども本人の状況が深刻な場合、児相は親と面談する必要があります。その際、子ども本人を特定させない形で、たとえば学校から相談があった、近隣からの情報があったなどの説明で対応されるケースが多いです。
絶対にバレないとは言い切れませんが、児相は子どもの安全を最優先に動きます。バレる確率を最小化したい場合は、児相のソーシャルワーカーに「親に知られたくない事情」を最初に明確に伝えると、対応の組み立て方が変わります。
学校と親、それぞれにどう伝わるか
一時保護中は通学が制限される場合もあるものの、児相と学校が連携して登校を継続できるよう支援するケースもあります。クラスメイトには家庭の事情で休んでいる程度の説明にとどめられるのが原則です。親については、児童虐待は刑事事件として扱われるケースもありますが、児童相談所の対応は親を罰することではなく家族を支援するのが基本方針です。重大な事案、たとえば重傷を負わせる身体的虐待や性的虐待などは警察と連携して刑事手続きに進むこともあるものの、それ以外の多くのケースは親に対しても援助プログラムが提供される設計になっています。
ユースクリニック
公的な相談窓口を主な選択肢として書いた上で、もう一つだけ、敷居の低い場所を紹介します。ユースクリニック Produced byペアライフです。
ユースクリニック Produced byペアライフ(100円のカウンセリング窓口)
10-20代向けの相談窓口です。1回100円・20分で、話を聞いてもらえます。ニックネームでの予約・来院ができ、保険証や身分証は不要です。親や学校への連絡もありません。完全個室です。いきなり児相は重い、学校のスクールカウンセラーには知り合いに見られそう、と感じる人にとって、最初の入り口として使える場所です。
ユースクリニックでできること: 話を聞いてもらえる場所として機能します。状況を一緒に整理することも可能です。次にどこへ相談すればよいか、必要に応じて医療機関への案内も行っています。心身に不調があれば、医師の診察への橋渡し役としても使えます。
親からのDVと相談についてのよくある質問
Q. これくらいで相談していいの? もっとひどい人がいるのに、と感じる
これくらい、と感じてしまうのは、虐待被害を受けている人によくある認知のパターンです。あなたが嫌だ・怖いと感じていれば、それは相談の対象になります。他の人がもっと大変だから自分は我慢しよう、と考えなくて大丈夫です。児童相談所も、スクールカウンセラーも、深刻度の高い被害だけを受け付ける場所ではありません。あなたのこれくらいは、あなたにとってのいちばんです。
Q. 親同士のケンカを毎日見ている。自分は殴られていないけど、これも虐待?
はい、2004年の児童虐待防止法改正で、面前DV(親同士のケンカを子どもが見聞きすること)は心理的虐待として明確に位置づけられました。自分は殴られていないから、と過小評価する必要はありません。あなたが受けている影響は、本物です。親同士の暴力を見続けることが、脳と心に長期的な影響を与えるとする研究知見もあります。
Q. ご飯を作ってもらえない・お風呂に入らせてもらえない・無視される、これは?
ご飯を作ってもらえない、それは普通じゃない。あなたは助けを求めていい状態にあります。これらはネグレクト(育児放棄)という児童虐待の一類型です(児童虐待防止法 第2条)。身体的な暴力がなくても、生活の基本を守ってもらえていなければ、虐待にあたります。学校の養護教諭か、児童相談所虐待対応ダイヤルに、ご飯がない・お風呂入れない、と話すだけでも、相談として成立します。
Q. 18歳になったら児相は使えないんですよね? どこに行けばいい?
児童相談所の一時保護は、原則18歳未満が対象です(児童福祉法 第33条)。18歳以上の場合は、子どもシェルター(社会福祉法人カリヨン子どもセンター等、2025年1月時点で全国約20軒)、女性相談センター、配偶者暴力相談支援センター、自治体の若者支援センターが選択肢になります。18歳を境に相談する場所がなくなる訳ではありません。入居の相談は、弁護士会の子どもの人権110番が窓口になることが多いです。
Q. 友達が親から DV を受けている。自分には何ができる?
友達の話を否定せずに聞くだけで、それは大きな支えになります。あなた自身も、児童相談所や弁護士会の子どもの人権110番に、友達が親から暴力を受けている、と相談できます。あなたが代わりに通告することも、可能です。ただし、無理に説得して動かそうとしないことも大切です。友達のペースを尊重しながら、できることを一緒に探していく姿勢が、結果的に友達を支えます。
まとめ
- 親からの行為は、児童虐待防止法 第2条の4類型(身体的・心理的・性的・ネグレクト)で整理されます。親同士のケンカを子どもが見聞きすることも、心理的虐待です
- 相談できないのは、家の中で自分の安全を守るための自然な反応です。家にいられなくなる、報復が怖い、親を傷つけたくないという気持ちには、どれも正当性があります
- 敷居の低い相談先から順番に選んでよいです。学校の保健室・スクールカウンセラー、児童相談所虐待対応ダイヤル、配偶者暴力相談支援センター、弁護士会の子どもの人権110番、それぞれ役割が異なります
- 児童相談所に通告した後、必ずしも一時保護が発動される訳ではありません。調査・アセスメント・支援計画の段階を経て、子どもの状況に応じた対応が決まります
- ユースクリニック Produced byペアライフは、1回100円・20分で話を聞いてもらえる相談先です。ニックネーム可・親や学校への連絡なし・完全個室です
ユースクリニック公式インスタグラムInstagramでも発信しています
ペアライフクリニックの実績
性感染症学会・感染症学会 所属医師 15名
性の健康カウンセラー 3名
思春期保健相談士 1名
LGBT基礎理解検定初級 1名
ペアライフクリニックがこの記事の監修を行っています。
この記事は2026年5月時点の情報に基づき、ユースクリニック Produced byペアライフが医療・公的機関の一次情報を参照して作成しています。法令・制度は改正される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・こども家庭庁・内閣府男女共同参画局等の公式情報をご確認ください。個別の状況によって対応は異なるため、まずは医療機関や相談窓口にご相談ください。